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コラム

Spirit of Silence

By Troll

音が聞こえないので得をした

2005
Issue 2

旅を始めてから、当たり前に思っていた「睡眠」を考えるようになった。工夫さえすれば、野宿でも快適に寝る方法はいつくも・るものだ。

ところが、山小屋で泊まったとき、長距離フェリーの2等和室に寝たとき、ウチがいつものように快適な朝を迎えると、周りの人は目の下にクマを作っているではないか。さては、昨夜飲みすぎたのか? と思って、聞いてみたら。「隣のオヤジのイビキがうるさかった」と、いうので・る。それ以外にも、「蚊の羽音が不愉快で」とか、「外の風雨が怖くて」とかで眠れなかった、という。

どんなにフカフカなダウンシュラフにくるまっていても、音だけは、どうにもならない、らしい。「耳栓すれば問題ないのでは?」といったが、耳栓してもダメな時も・るらしい。ウチら聾者は初めから、耳栓しているようなもので・る。ま・、聞こえる人でも、この雑誌の編集者のように、どこでも気にせず爆睡できる人もいるけれどね。

そうそう。と・る牧場に寝ていたときも、健聴者の友人を気の毒に思ったことが・る。夜中から、近くの納屋の天井でネズミが走り回り、夜明けにニワトリが鳴いたかと思うと、一斉に牛が合唱し、鳥や犬までも吠え始めたのだ。極めつけは、ウチもまた、豪快なイビキをかいていたようだった。

その友人は、もちろん一睡もできず、貧血状態になって、帰っていった。ウチの家族はデフ・ファミリー(家族みんな聾者)だったから、今まで、イビキを気にしたことがなかったので・る。ごめんなさい。これに懲りず、また一緒にでかけましょうね。

トロール
本名・永易トロール。静岡県清水市出身。生まれながら聴覚障害をもちながら極上のパウダー、誰もいない無人島、どこまでも続く地平線を追い求め、テレマークスキー、カヤック、MTBに跨がり旅を続けるアクティブウーマン。