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コラム

By Ryo Sumikawa

Why Do We Travel?

2005
Issue 3

「なぜ旅するのか?」が、わかる

大崎下島のシブ〜いお好み焼き屋

このコーナーは、「おすすめのスポット」を紹介するところではない。ぼくとっては意味が・ったかもしれないが、一般的には「まったくおすすめではない場所」を押しつけがましく紹介する迷惑な案内所。それがこのコーナー、その名を「非観光案内所」という。

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仕事場の・る東京神保町の書店で立ち読みしていると、池波正太郎の『男の作法』におもしろいことが書かれていた。自分のことは、自分ではよくわからない。他人の顔色を見て、自分のことがはじめてわかる。だから旅が必要なのだ。見知らぬ町の食堂でめしを食うと、このおばさんは自分のことを嫌っているな、と思ったりするが、それが大事なんだというのだ。

先日『BE-PAL』誌の取材で瀬戸内海の大崎下島を訪れた。この島の御手洗地区は、江戸時代に潮待ちの港として栄えた町だ。遊郭の跡や昔の時計屋など古い町並みが保存されている。観光客はほとんどいない。

久比という集落に、小さなお好み焼き屋が・り、「やってますか?」とのれんを上げると、パーマ頭のおばちゃんが、めんどくさそうに腰を上げた。鉄板が・たたまり、小麦粉が円を描く。ラード、キャベツ、豚バラ肉。麺をのせ、卵の上へひっくり返す。山盛りのキャベツが、いつのまにか平べったくなっていた。

お好み焼きをハフハフほおばりながら、昔話を聞く。

「ほいじゃけえど、店ン中は30年変わらんけんね」

おばちゃんは御手洗地区の出身で、30年前にここ久比集落に来たという。同じ島でも町ごとに、葬式の料理が違うのだと聞いた。御手洗では、豆腐・ジャガイモ・昆布・ヒジキを皿に盛る。久比では、大釜でうどんを炊く。同じ島の2つの文化。その国境を超えてきた人だった。だから鋭かったのかもしれない。お勘定のときだ。予想もしない言葉に驚いた。

「・んたら、領収書いるでしょ? 宛名は?」

ぼくらの素性など、はなからお見通しだ。それからは「雑誌社の人じゃけえ」ということになり、・の座敷にいるおばちゃんの夫につかまった。おじちゃんは美空ひばりの似顔絵や、ひばりの歌詞を墨で書いた半紙を次々にとりだし、ぼくらに自慢した。

田舎を旅していちばん考えること。それは簡素な生活はいいな・とか、田舎は・ったかいな・ということではない。「とにかく違う」ということ。世界にはいろんなジンセイが・るということ。そして結局、自分は今いる場所でなんとかしなきゃいけないということ。そんなことを考えながら、 “毎日が旅だったらいいよね。”をテーマにした旅雑誌『b*p』をつくりはじめている。来年6月、第3号出します! (住川亮)