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コラム

Adventures of the Hokkaido Bush Pig

By The Hokkaido Bush Pig

Breaking All The Rules With Mr. Bear

2006
Issue 7

熊多発地域でのキャンプの熊対策の注意事項を読めば、少なくとも守るべきルールがあることはわかるはずだ。食料を熊に取られない場所に移す、テントの中で調理をしない、また食料をテントの中に残さない、といったのがそのルールだ。北海道には多くのヒグマが生息する。なかでも知床国立公園は、世界でもっともヒグマの密集地なのだ。

北海道の大雪山に初めて訪れた時、意外にも皆がこのルールを知らなかったり、知っていても実際に守っていないことを知った。僕はというと、大型ホ乳類のいないニュージーランド出身だし、ヒグマ多発地域である旭岳からトムラウシ山まで、はじめてのバックパッキングだったので、きっちりとルールを守ろうと思っていた。

最初のキャンプサイトについてすぐ、周りに木が一本もないので、すぐに、ルールのひとつが守れないことに気がついた。一般には、カウンターバランスという方法などで食料を木に吊るさなくてはならないのだが、大雪山のキャンプサイトは背の高い木がないところが多い。

僕がキャンプサイトに着いたときには、ほかに誰もいなかった。ルールに忠実に、テントから100mも離れたところで調理し、食料もテントから遠いところにある石の下に埋めて隠した。やるべきことをすべてやって、気分よくしていたら、日暮れまで後一時間というところに、他のグループが到着した。彼らは手際よくテントをセットアップしたあと、すぐにテント内で料理をし、食べ始めている。

そして驚くことに、朝になると彼等は食料までもテント内に置き、一夜を過ごしたことを知った。なにがなんだか、僕はわからなくなった。
「ここはヒグマ多発地域じゃないの?」とね。

地元のひとびとは、大雪山でキャンプをする上で、ミスター・ベアの心配をする必要はないという。ある年配の日本人男性は、第二次世界大戦時この地域で空軍演習が何度も繰り返されたため、ミスター・ベアは人に近寄らなくなったのだと教えてくれた。

もう一つ考えられるのは、この辺の人はいつも熊よけの鈴をつけ歩いている。ミスター・ベアは静かでピースフルなところが好きなんだ。
今年で僕は来日して9年になる。これまで何度も国立公園に足を運んだが、地元の人が注意を守る姿も、熊に出くわしたとかさえ聞いたことない。

そんなこんなで、僕の大雪山での熊対策にたいする考えはすっかり変わってしまった。今でも一人でキャンプする時は、しっかりとすべてのルールを守る。でも周りに他のグループがいて、彼等がテントの中で調理し、食べているなら僕一人だけルールを守っても意味が無い。まあ、それは僕の考えだから、ここを訪れる機会があったら、それぞれ自分で答えを出せばいいと思うのだが。


北海道ブッシュ・ピッグは、北海道に惚れ込み定住してしまったキウィ(ニュージーランド人)。北海道の100本以上のトレイルを歩き続け、週末はいつもブッシュのなかへ、という生活だ。