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コラム

Spirit of Silence

By Troll

Should I Stay or Should I Go?

2006
Issue 9

ウチは迷っていた。ここはテントの中。

実はさっきから、テントの外から、ガサガサと人為的に揺さぶられている。ここにテントを張ったことを後悔し始めていた。

ウチは日本海側を自転車で北上しながら、秋田にいた。北へ行けば行くほど、畑が増えていくかわりに、キャンプ場らしいところがなかなか見つけられなくなってきた。

雨が降ってしまい、やっと見つけた日帰り専用の健康ランドで、銭湯に入れたものの泊まるところが見つからずじまい。ただ、1箇所だけ見当をつけていた。
それが健康ランド内にある、屋根つき車庫だった。冷蔵庫やら古い家電が乱雑していたので、その中なら身を隠せるだろうと。たった一晩だし……。

テントの揺れは、さっきよりも激しくなってきた。ボコボコ蹴りが入るようになった。なるべくテントの中央部分に避難していたが、テントの外はどうやら一人じゃないらしい。覚悟を決めて、外に出るか。恐怖の瞬間だ。防衛用ゴキブリ撃退スプレーを片手に持つ。

そうして、テントのジッパーを恐る恐る開けてみると、外には中高年の人々8人ぐらいが立っていた。何か言ってきたので慌ててメモを取り出す。

「ここで何してる?」
「すみません、自転車で旅してる者です。雨がひどいので……」
「さっき風呂に入った人だね!」
それを筆談帳に書いたおばさんの顔を見て、思い出した。みんな健康ランドで働いている人だったのだ。

「さっきから声かけても出てこないし、無視されたと思って揺らしたんだよ」
「耳が聞こえないので、わからなかったんです」
「なんだ。それなら一言いってくれれば。明日は出るんだね? それならいいよ。今晩だけ、休みなさい」
「すみません、ありがとうございます」

泊まるなら、許可をちゃんと取るべきだった。みんな緊張が解けて、笑顔に変わっていった。みんなも怖かったようだ。心配をかけてしまって、本当にごめんなさい。