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コラム

By Troll

Mixed Up In The Mixed Bath

2006
Issue 11

真夏はどんな表情をしているのか。それが見たくて八甲田山まで、キャンプ道具満載のランドナー(旅用自転車)のペダルをこいだ。国道394号線では、口から心臓が飛び出してしまいそうな坂が、どこまでも続いていた。押して歩いたほうが早いんじゃないか? そんなことを思いながら、酸ヶ湯温泉のキャンプ場を目指していた。

午後3時を過ぎた頃であろうか? 日が陰り、森の中に忍びよる黒い影を感じる。それを振りきって、ようやく到着。ところが「キャンプ場は、工事中でございます」との事務的な案内があるのみ。テントを張るのは後回しにして、まずは体が発酵しかけている。温泉だ! しかし、その温泉も男女別の内湯の外来は夕方5時まで。混浴の千人風呂なら入れるとの事だった。

「えっ?混浴?」

でもこの際、風呂に入れれば何でもよかった。サイドバックから着替えセットを取り出し、浴場へ急ぐ。かけ湯で体を洗い、いざ湯煙のヒバ風呂へ。日焼けした肌がしみてくる。硫黄の湯が、心身ともに効く。そんなとき、誰かが手招きしていることに気づく。境界の向こう側の男湯にいる、おじいさんが怒った顔をしているではないか。

「おい、そっちは女湯だぞ! 早く男湯に戻りなさい」というようなことを言っているらしかった。

混浴といえども、同じ浴槽内に男女の境界があり、こちら側が女湯。当然ウチは女であるからして、そこに浸かっていた。しかしスポーツ刈りの頭に、真っ黒焦げのガキのような風貌である。そう、間違われてしまったのだ。だが、困ったことに温泉までは筆談ノートを持っきていない。湯船のなかでは、身ぶり手振りもあまりできない。相手が感情的になって冷静さを失っているときには、自分の意志を伝えることが難しい。裸を見せれば早いけれど、そんな勇気などあるはずもない。どう説明すればよいかわからなくて困っていたら、すごい剣幕で「早く!」と叫びだしてしまい、その場にいた男も女も皆が振り返る結末。

でも、その時優しそうなおばあさんが近づいてきて「あんた、女かね?」と話している口が見えたので、首を縦にふって肯定した。それで代弁してくれた。おじいさんは「信じられない」という顔をしたが、しばらくして、なぜか笑い出した。こっちも笑うしかなかった。かなり焦った混浴風呂だったけれど、時には、こういう人が女湯に居ることも忘れないで下さいな。