>  屋外日本雑誌  >  Issue 16 : 5月/6月 2007  > コラム  >  Travelers Tune  >  No ‘Silent Nights’ in India

コラム

Travelers Tune

By Troll

No ‘Silent Nights’ in India

2007
Issue 16

「インドはうるさくて疲れるよ……」 いつか誰かが、そんなことを言っていた。 

でも、うちのような騒音を経験したことのない聾者にとって、それはどういう事なんだろう? 誰かの声、騒音など、耳から入るものじゃない、“うるさい”要素ってあるのかな?

インドのデリー空港から、市街地にあるニューデリー駅に着くと夜明け前だというのに街は人とミニバンとオートリキシャ(バイクタクシー)であふれかえっていた。道端で人は横になっていたり、焚き火する人もいる。男たちの目の玉だけが暗闇に白く浮かんでいる。ギョッとする風景だ。

世界遺産「タージ・マハール」へと向かう電車のキップを買いたいと思ったが、ヒンズー語が読めるわけもなく、どこを並べばよいかわからない。すると親切なインド人が声をかけてきた。チケット売り場に案内してくれるようだ。しかい、ついていった先はインチキのツアーデスク。何とか正規の窓口を見つけ、電車に乗ったときには、もうクタクタだ。だから次の行き先「ダラム・シャラー」へはバスを利用した。

その公共の夜行バスは乗合で頻繁にインド人が乗り降し、エアコンすらない。冷凍庫のように寒い車内でシュラフにくるまり、激しく揺られながら高度を稼いで到着。空にはヒマラヤ山脈が浮かび上がっている。 

ここでの夜は、月が景色のすべてと照らし、星が少しずつ動いていく。うちらがいる地球が今も回転しているのことを感じた。こときが、日常がサイレントなウチにとっての本当のサイレントな時間、であったのかもしれない。地球の鼓動に耳を澄ますということは、目を凝視するということと同じなのかもしれない。それは心の静寂でもあった。

あっという間の2週間。帰国する時がやってきた。また、あのデリーに戻ってきたのだ。そして、わかったんだ。

“うるさい”っていう意味がね。

“目が落ち着かない”ってことだったんだ。 

リキシャの運転手達が群がってきた。交渉をして乗るが、どの運転手も似たようなものでケンカをしないと行きたい所にも行けない。でも最後に利用したオートリキシャはメーター制で交渉しなくて済んだ。でも、ホッとしたのも、つかの間。まっすぐ行くはずのルートを左折しまくり、メーターを稼いでいる。なんてこった! 

ウチは怒って、罵声するかわりに日本の指文字で“サ・ギ”とやった。彼には、もちろん理解できるはずもない。だが、そのサギ師は、すぐに正しいルートで目的地に向かったじゃないか。

「やれば、できるじゃん」かくして、うるさくてサイレントなインドを後にしたのだった。