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コラム

High Tide

By Mitsuharu Kume

Space from the Sea

2007
Issue 17

海のなかは、しばしば宇宙に例えられることがある。エアータンクを背負って海に潜れば、無重力の宇宙に似た感覚になり、どこまでも青い世界が広がっている。深海の世界は宇宙に比べれば遙かに近いのに、未知なる世界がまだまだいくらでもある。生命の源である海、地球の源である宇宙。ここには何か関係があるのだろうか。

 海という宇宙の上、空という宇宙の下。それが人間の暮らす世界といったらロマンチック過ぎるだろうか? でも、そんな宇宙にはさまれた空間で暮らす人間だからこそ、海のなかへ、空高くへ、高い山へ、重力を感じる雪山の滑降へと好奇心をくすぐられるのだろう。

僕の興味の対象といえば、海の水が盛り上がって、雨のように降ってくること。そう、海という宇宙の上にできる波だ。大きい波、小さい波、波にもいろいろあるけれど、そのどれもが風や潮の満ち引き、海底の地形などで変わってくることも面白いし、その瞬間を写真に撮ることが僕の楽しみとなっている。そして、そのために体ごと海に浸かり、波と戯れれば潮水を肌で感じ、太陽の光は水面で輝き、心地よい世界に包まれる。それは、お母さんのお腹のなかにいるような感覚でもあり、人間は海から進化した生物であることも、きっと関係しているのだろう。

ところで、日本は島国だ。だから日本人は昔から魚を採って暮らしていた。漁師さんにとって月の引力による潮の満ち引きは、現在も生活に深く関わっている。旧暦と呼ばれる月齢を周期とする暦が、そう遠くない昔まで使われていたことからも窺える今でもカレンダーに旧暦が記されていることも多く、旧暦で祭りをする風習も残っているのだ)。僕自身、漁業に従事して15年。サーフィンはじめて20年。海とともに暮らしているのだけれど、旧暦の方が暮らしのなかでは必要だ。海の暮らしには、月と地球の関係がとっても大切なことで、それは宇宙を感じながら生活していることでもある。海と宇宙は繋がっているのだ。

日本の昔の漁師言葉に、いい方向に物事が向かうことを「上げ潮じゃ、上げ潮じゃ」というのがある。地球は温暖化により、海面がどんどん上昇している。これを「上げ潮じゃ」と喜んでいては、大変なことになる。でも、そんな現実を見て、壊し続けた自然を大切にしようとみんなで努力しはじめている今が、実は「上げ潮」の時なのかもしれない。