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コラム

Travelers Tune

By Shoutaro Takahashi

The New, Old Sounds of Brazil

2007
Issue 19

人気ミュージシャンに聞いた 音楽とは関係がない質問、「あなたの母国で旅すべき場所を教えて?」 最終回は、あの大物、アート・リンゼイの登場です。

先鋭的な音楽を試みるミュージシャンは多いけれど、それが商業的にも成功し、ファンからの絶大な支持を集める人はほとんどいない。しかし、例外的な存在が、アート・リンゼイ。相当に風変わりなギターのセンスで、パンク~ジャズ~ファンクと音楽スタイルを変えながら、常に注目され続けている。いまやカリスマ級の孤高の存在だ。
「3歳から17歳まで、ブラジルで暮らしていたんだよ。で、アメリカに戻ってからは忘れていたんだけど、いつからかブラジルの音楽が面白くなってね」
そんなことを話してくれたのは、アート本人。彼は自分のルーツであるブラジルの音楽に傾倒し、近年の彼のソロ作には、その影響がたっぷり含まれている。この手の音楽に興味がある人には、もはや常識的なことだろう。

 ともあれ、いまやブラジル音楽といえば、世界的にアート・リンゼイ。やはりアートは、ブラジルの音楽のすべてを知り尽くしているんだろうなあ?
「いや~、ブラジルっていう国は、大きいんだよ! 僕も把握しきれないんだ。地方都市に行くと、本当に驚く。僕も聴いたことがないリズムやビートが、まだまだ眠っているんだから。例えば……」
といって話し始めてくれたのはいいが、出てくる地名にキリがない。差し当たって、特に重要な5か所だけ地図に印をつけてもらったところ、丸が付いたのはベレン、サンルイス、レシフェ、サルヴァドル、そしてリオデジャネイロ。はじめの4都市に行けば、ジャンル分けしにくいどころか、なんと新しいジャンルといってもよいほどの、いまだ発掘されていない未知のサウンドが存在するとのこと! 
アート・リンゼイさえ知らないブラジル音楽! これはぜひ現地に行って、聴いてみたい。ひょっとしたら、僕が新ジャンルを発掘! なんてことが、万が一にもありえるのかもしれないのだ。
でもまあ実のところ、ブラジル音楽にまったく詳しくない僕や普通の人が行ったところで、その価値がわかるかどうか微妙なのだが。
「まあ、そういわずに行ってみるといいよ。あちこちから音楽が聞こえてくるという街の雰囲気もいいし、ゴハンもうまい(笑)。でもブラジル音楽の初心者だったら、最後に印を付けたリオデジャネイロに行くだけでも刺激的だよ。ここには面白いバンドがたくさんいるから、現地でしか手に入らないCDを買ったり、デビュー前のミュージシャンに目をつけるなんてこともできるだろうね」
そうか。ならば、まずはリオへ。そしてブラジル音楽に詳しくなったら、次は地方都市。ブラジルへの旅は、2段階で考えるのがよさそうだ。(高橋庄太郎)

これだけは聴いておく。
名盤で綴る
アート・リンゼイの歴史


DNA
DNA on DNA (NO MORE)

彼の音楽的スタートは、ニューヨーク・パンクの代表として知られるDNAから。かなり前衛的サウンドで、アートは12弦ギターに11弦だけ張って、演奏していた。

The Lounge Lizards
The Lounge Lizards(Plan 9/Caroline)

アートの次のバンド活動は、一転してジャズ。それも当時、フェイクジャズと称された、風変わりなものだった。彼のギターは、ここでも相当なねじれ具合をみせているわけです。

Ambitious Lovers
Greed  (Virgin)

ピーター・シェーラーとのユニット。現在の彼の音楽に通じるブラジル音楽のテイストが程よく感じられ、音作りもポップに。80年代を代表するファンクな名盤。

Arto Lindsay
Salt(Righteous Babe)

ブラジル音楽へと本格的に進み、ソロ活動を開始。こちらは2004年にリリースした最新アルバム。日本盤の「SALT 2」には、コーネリアスが参加した曲も収録。