コラム

Spirit of Silence

By Troll

DreamCatchers

2007
Issue 19

この夏、21人の子ども達とキャンプをした。ある、ひとつのキッカケからだった。

ウチが自転車で日本をまわっていたときに出合った中学生が「その大きな荷物を持ってどこへいくの?」と、手話で聞かれた。たまたま、同じ聾者であるウチがキャンプ道具を満載にして旅していることに目を丸くした少年は、そして、こう言った。
 「ろう者が夢をもつことは意味がない、とボクは周りの大人から聞いている」。

その言葉はウチにとって、かなりの衝撃であった。以来、ずっと聾の子どもたちが夢をもって生きていくことに繋がる何かを、出来ないかと考えていた。

そ んなウチに出来ることとは、“自然の中で遊ぶ楽しさ”を、聾の子ども達と共有することじゃないかなって、思えるようになった。今回のキャンプはそんな思い から、準備を積み重ねてきた。子ども達も、スタッフも、朝から晩まで手話で話せる環境で、自然のなかで自由に遊べるキャンプにした。

実 際に、旅で使っているテントを持ち寄って、子ども達に好きなテントを選んでもらう。もちろん、自分達で組み立ててもらった。ハンモックは、破れてしまうぐ らい宙に舞って、高く揺れ、動いた。いっぱい遊んで疲れているはずの子ども達は、朝4時にはもう起きて、外で遊んでいた。スタッフも元気な子どもに起こさ れ、白み始めた空の下で炸裂する笑顔、笑顔、笑顔

そして、今回のビッグイベント「カヌー体験」は、聴者のインストラクターがレクチャーをし、その横で手話通訳者が同時通訳で説明をするというもの。子ども達は、その通訳をみながら、パドルを動かしたり、カヌーの乗り方を理解する。

始 めの頃は「カヌーが怖いから乗らない」とか、「1人乗りは自信がない」とか言っていた子もいたのだけど、子ども達が一人艇に次々に乗っていくのを見ていく うちに「ボクもひとりで乗ってみる」という気持ちになり、最後には子ども全員が一人艇に乗って自分でカヌーを操縦した。
 

「やればできるんだ」
その瞬間、子供たちの自信に満ち溢れた顔が太陽に照らされて、輝いていた。湖を漕ぎまわり、いつまでも陸へ戻ろうとしなかったのであった。