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コラム

Nature Trails

By Mitsuharu Kume

The Roof of the Gods

2008
Issue 22

二礼二拍一礼。

  朝の光は眩しく、賽銭箱の朱が鮮やかに見える。が、その奥は拝む先の神聖さを一層増すように、暗い。その暗い拝堂の中に入り、もう一段上のもっと暗い本堂 に向かって頭をもたげ、お払いを受ける男5人。1人は将棋好きのペンキ屋サーファー、1人は恰幅のいい綺麗な作業着を着た建設屋さん、年期の入った作業着 と笑いジワのあるオッチャン2人。そして、真新しい足袋を履いた僕である。

この日は、島のとある神社の補修工事開始日。サーファーであるペンキ職人に声をかけられ、神社の屋根のペンキ塗りを手伝うことになったのだ。

156段の石階段を登ったところ、小高い山の頂上付近に神社があった。日本では、集落にはたいてい神社があるのだけれど、ここは島のなかでも特に大切にされている神社だ。そんな由緒ある神社の神様の上で、これから仕事をするのだから身が引き締まる。


午前中の作業が終わり、昼休みというところ。石段をかけ降り、近くの浜まで走ってみる。何故、走るのかと言うと、もうすぐ島で年に1度行われるフルマラソ ンがあるからだ。今年で走るのは7回目。でも、いつもフラフラ。かろうじてゴールしている。走ることが好きではない僕は、意地で走っているだけだった。だ から、いつもの練習は家のまわりの5kmコース。それでは、面白くないことにやっと気がついた。それは、トレイルランナーの石川弘樹さんと仲良くなり、走 る楽しみを教わったからだった。


自然の中を走り抜けるトレイルランニング。何が楽しいのか聞いてみた。


「自然の中に入り、その景色を、空気を、季節を体で楽しめること。登山やハイキングで一日がかりで見る景色を、軽装備で数時間で見ることができること」

 彼から、そんなことを教わった。以来、仕事先の知らない場所や友達の家のまわりなど、30分でも時間を見つけたら、靴を履き替え走る楽しみを覚えたのだ。

  僕は海が好きだからビーチラン、コーストランという感じで、好きな海辺を走ることが多い。波の音を聞きながら、普段遠くてなかなか行かない浜まで走れば、 うまく砂がついているところを見つけ、サーフポイントの下見にもなる。最近興味を持っている、ウミガメの産卵だってきっと見つけることが出来る。もちろ ん、カメラマンの僕はカメラを持って走る。これはもしかしたら、自分に合っているのかもしれない。

 石段を駆け上がり、弁当を食べ、また神様の屋根に上り仕事を始める。さっき走ってきた砂浜が、眼下に見える。

 楽しみをまたひとつ見つけてしまったから、上げ潮じゃ、上げ潮じゃ。