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コラム

Travelers Tune

By Troll

An Unexpected Road to the Horizon

2008
Issue 23

ウチの“初めてのチャリ旅”は地平線が見たい、という想いで選んだ北海道だった。

その道中、カ ヤックが転がっているショップを見かけ、思わずプレハブ小屋の扉をたたく。すると、レスラーみたいなガイド、ヨハが現れた。
 「ツアーに行きたい のですが……」

ウチは、ノートに書いて話を進める。そうして、明後日に知床岬までカヤックツアーをやることに決まった。翌日は、買出しや 情報などを仕入れる。ヨハは濡れても大丈夫なように地形図をラミネートし、うちらと筆談するためにホワイトボードを用意。彼からは、熊鈴と足首に巻く反射 バンドを渡された。パドルやカヤックにも反射テープを貼り付け、出発だ。

断崖絶壁が続く。そこを漕ぐと、ところどころに洞窟がある。なか に入ると真っ暗で見えないが、反射テープがはっきりと見える。それを頼りに洞窟内を巡るのだ。 漕ぎ進むと昔ながらの自然な岩などがあり、必ずアイヌ語の 由来がつけられていた。それが形を意味するものであったり、地形の特徴を表すものであったりする。だから、ヨハはそのたびにホワイトボードで由来を説明す る。

名前を読む。地形や歴史を予想するのが楽しい。チャラセナイ川(滝の落ちているところ)が海に辿りつくところはカシュニ(狩り小屋の あるところ)の滝。ドキドキしながらカヤックで滝の中に突入。思ったより強烈な水のパワーで火照っていた身が冷やされる。

ようやくテント が張れそうな入り江が見えてきた。レタラワタラ(観音岩の有る白い岩壁)だ。その時、はるか向こうの水平線で、太陽が今にも落ちようとしていた。パドリン グをやめて、もう2度と見ることができない今日かぎりの夕陽を眺めていた。太陽がいつもより偉大に感じられる。空を橙色から紫色の不思議なカラーに染めて いくが、いつまでも水平線の境目でオレンジの光を放っていた。すぐには沈まない光って、はじめてみた。

チャリ旅の途中での、寄り道カヤッ クツアー。洞窟や滝のなかではしゃいだり、壮大な夕陽をみて感動したりしたこと。その共通体験が、ヨハと初対面だったのも忘れ、信頼しあえる仲間として旅 の思い出をより深くしてくれた。そして、水平線はウチの心の深いところに焼きついた。それからというもの、今日までチャリ旅の途中に道草はかかせないもの となった。